【佐賀県立名護屋城博物館】前川建築設計事務所の設計した、日韓の交流史を展示する博物館 前川建築に見られる特徴とこの建築独自の特徴についても深掘りします!

概要
さて、本日紹介する建築は、前川建築設計事務所+おがた建築設計室の設計の、佐賀県立名護屋城博物館です。
名護屋城とは、約400年前、豊臣秀吉が朝鮮出兵のために築いた城で、国の特別史跡「名護屋城跡並陣跡」の保存整備と、日本列島と朝鮮半島の交流史を調査・研究・展示し、日韓の学術・文化の交流拠点となることを目的に建てられました。
私は、前川建築設計事務所の設計の建築にはいくつも行ってきましたが、その中でも一番好きな建築でした。
私は、「一日一建築」と称して、自分の好きな建築について発信しています、著者のちぇりーです!
このサイトは、建築巡りが好きで、一級建築士の資格取得に向け勉強する建築学生が、使い手と作り手という両方の目線から、建築について学び、発信しています。ぜひ見ていって下さい!
見どころ

写真は、エントランスを入ったところで、このような多彩な素材の組み合わせが見どころです。
有田焼のレンガ、格天井のように見えるコンクリート打ち放しの梁に型枠の表情を残す柱、佐賀・福岡県沖に位置し日韓をつなぐ「玄界灘」の波を表現する黒御影石…このように多くの材料がまとめられています。
公式サイト(営業時間、アクセス等)
公式サイト:佐賀県立 名護屋城博物館 (→とても見やすいサイトでした!)
営業時間:9~17時
主な休館日:月曜日
アクセスは、公共交通機関だと少し不便かもしれません。私は今回車で行きましたが、車がおすすめです。
シークエンス
すごく魅力的で、ひとつひとつ違う表情をした、絵になるシークエンスの連続でした。
まずは、お濠の上に位置しているからか、博物館よりも低いところにある駐車場から登ってくる間に撮った全体の写真です。
堂々としたレンガの外壁の、2つのボリュームの間から、ガラス張りのボリュームが飛び出していたような外観をしています。
マテリアルを変え、一部だけガラス張りにすることで、そこがエントランスだとすぐに伝わる外観ですね。

写真1枚目:お濠越しに見るとエントランス棟のみガラスとコンクリートという素材でつくられています。
写真2枚目:エントランス棟は、とても堂々としている。そこまでの動線は堂々とした姿とは違う印象で、手前の石垣をよけエントランスに入ると右へ左へと振られました。まるで天守閣への入り組んだ道を歩いているようでした。
写真3枚目:エントランス棟に入ると、展示室への階段と広々とした吹き抜け、踊り場とガラスを介して豊かな緑を見ることができます。



写真1枚目:振り返るようにして、展示室への階段を上ります。
写真2枚目:2階の展示室入口。天井が低く、格天井のような鉄筋コンクリートの天井が迫ってくるようでした。


2階展示室内観は、無柱空間であり、トップライトもあり、とても広々とした印象です。

私の好きな写真は、こちら!
展示室から出た時に見える、オレンジかかった色味の照明が、レンガの壁に反射して、夕焼けのように見えるところです。ぜひ実物を見てほしいのですが、本当に綺麗です。


二階の展示室から下りてきます。
私が行ったときは、常設展示のみだったので、以上になります。


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建築としての評価は?
建築家
今回の設計は、前川建築設計事務所+おがた建築設計室の設計です。
実は、前川國男(1905年5月14日 - 1986年6月26日)さんは、1986年に亡くなっていて、こちらの建物は1993年竣工のため、デザインは、途中から当時の所長、田中清雄さんが引き継いでいます。
前川建築設計事務所の代表作には、東京文化会館、弘前市民会館、熊本県立美術館、ロームシアター京都などがあります。
以下の写真は、同じく九州に位置する、熊本県立美術館です。


前川建築設計事務所の建築(熊本県立美術館との比較)
ここでは、前川建築設計事務所の設計の特徴を、熊本県立美術館と佐賀県立名護屋城博物館とを比較することで掴んでみたいと思います。
共通点には、赤れんがを使った壁面、屋内外で同じ床の仕上げとすること、打ちっ放しコンクリートの柱に格天井のような梁という点があります。
これだけ共通点があると、今回紹介する佐賀県立名護屋城博物館は、熊本県立美術館と一見似た構成のように見えますが、以下の様な点で異なっていました。
(熊本県立美術館は1974年竣工で、前川國男さん(没1986年)が設計に関わっていて、佐賀県立名護屋城博物館は1993年竣工で、前川國男さん(没1986年)の没後です。)
壁面のレンガ
熊本県立美術館のレンガのほうが、よりマットな質感で、佐賀県立名護屋城博物館は地元有田焼の紫褐色の釉薬の窯変磁器質タイル打ち込みという、少し反射のあるてかてかとした質感のレンガのような材料を用いています。
どちらも、前川建築設計事務所の設計の特徴である、「打ち込みタイル」の工法でつくられています。
これは、このタイルを固定するために後ろにコンクリートを流し込む際に、この穴からくぎを打てるため、タイルがコンクリートと一体化する、とても安全性の高い工法です。


鉄筋コンクリート打ちっ放しの梁
こちらは、とても小さい違いですが、熊本県立美術館では梁の交点が円になっていて、佐賀県立名護屋城博物館は面取りのように斜めになっているデザインです。


床
熊本県立美術館の床は、壁面のレンガと合わせたレンガが床に並べられていました。
その一方で、佐賀県立名護屋城博物館は、レンガではなく、御影石が用いられています。こちらの模様は、佐賀・福岡県沖に位置し日韓をつなぐ「玄界灘」の波を表現していて、石を床にはった後に、バーナーの炎で点描のようにして描かれた、大変労力のかかったデザインです。



この床材は、エントランスから始まるので、ここを訪れて、一番最初にその美しさに衝撃を受け、スケッチをしました。
写真では伝わりにくいのですが、まるで雨に濡れたのかと思うくらいのツルツルな部分に、光が当たってきらっとするんです。前川建築設計事務所の設計の中でも、私はこの建築が一番好きなのですが、その理由が、そのようにマットな質感だけでなく、有田焼のタイルや床といったきらっとしたアクセントが入る、抑揚のあるデザインだからです。
各所に素材の温もりや手の技を残すことにより、建物に暖かい人の営みが宿ることを願った。
佐賀県立名護屋城博物館 | プロジェクトトップ | 新建築データ
以下の写真は、この建築で私が集めた、「きらり」な瞬間です。



コンセプト
朝鮮半島との交流史について学べる、日韓の学術・文化の交流拠点として建てられた建築であるため、日本の材料と韓国の材料とを組み合わせてつくられています。
例えば、日本固有の材料としては有田焼のタイルや、外壁に使われた韓国産の白御影石が挙げられます。
有田焼のタイル


韓国産の白御影石(こぶ出し仕上げ)


機能について
国の特別史跡「名護屋城跡並陣跡」の保存整備と、日本列島と朝鮮半島の交流史を調査・研究・展示するため建物であるため、常設展示室や企画展示室のほかにも、収蔵庫や研究室、事務室などがあります。
さらに、多目的ホールもありました。踊り場は、ホールのホワイエとして使われるようですね。


敷地
この建物は、豊臣秀吉が朝鮮出兵のための拠点としていた名護屋城の跡地、という、敷地にまつわる歴史の特殊性から設計されています。
「コンセプト」の項で説明した、日韓の材料を用いていることなどです。
詳しくこの地やその歴史について知りたい方は、こちらのサイトがとても分かりやすかったので見てみてください。
なごやのことも夢のまた夢【名護屋城博物館:前川建築設計事務所・前川國男4.5】佐賀県唐津市|龍造寺文庫
最後に
まとめ
佐賀県立名護屋城博物館は、前川さんの没後竣工の建築でしたが、前川建築設計事務所の設計の特徴を引き継いだ美しい建築でしたね。
熊本県立美術館との比較により、それが明らかになりました。
ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました!
このブログでは、「一日一建築」と称し、いろいろな建築家の方の建築を紹介しています。よかったらご一読ください。↓
Pioneer Of Attractive Archi – より深く名建築について知ることができるサイト。 (attractive-archi.tech)
昨日紹介した建築はコチラ!
参照サイト等
・豊臣秀吉の2つの茶室を、佐賀県立名護屋城博物館で体感する。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS
・建築・デザイン系 - 分科会/木造研究部会Vol.16
・なごやのことも夢のまた夢【名護屋城博物館:前川建築設計事務所・前川國男4.5】佐賀県唐津市|龍造寺文庫
・佐賀県立名護屋城博物館 | プロジェクトトップ | 新建築データ
・INAX ARCHI Letter No:PT1209
・打ち込みタイル、はつりコンクリート… 公園の自然に溶け込み親しまれる機能も 福岡市美術館㊦前川建築とリニューアル| アルトネ
