【富山市民プラザ】槇さんの作る「都市」的建築(建築体験記)

概要

さて、本日紹介する建築は、富山市民プラザです。この建築は槇文彦さんの設計です。
書籍にも中々載っていないような、あまり知られていない建築ですが、行ってみたところ、本当に空間の力を感じる建築でした。
築30年以上建っているとは思えない、時代に捉われない造形と、美しさでした。

ここで少しだけ自己紹介をさせてください。「一日一建築」と称して毎日自分の好きな建築について発信しています著者のちぇりーです!
このサイトの特徴として、建築学生が建築計画という観点から評価するというところで、ボリュームは少し多めですが、その分、建築についてより深く学べると思うのでぜひ見てみて下さい!

見どころ

エントランス入ってすぐ左にある階段前。リズムのある壁やガラスが空間を生き生きさせる。

富山市制百周年記念事業における計画で設計されました。
人びとがわずかな時間でも訪れ、自発的な行動を促す。そんな都市的情景が散りばめられた建築になっています。
このような文言だけでなく、何より、実際訪れた時、空間の力を感じました。ぜひ訪れてみて下さい!

公式サイト、アクセス

富山市民プラザの公式サイトは、以下になります。営業時間、駐車場や会議室の予約状況を確認できそうです。
アクセスに関しても、以下サイトをご覧ください。
https://www.siminplaza.co.jp/

この建築について

建築家

今回の設計は、槇文彦氏です。
彼は、モダニズム建築の巨匠の一人で、幾何学の中にとても空間性の高い設計をしているように見受けられます。
今後紹介していきたいと考えています。

コンセプト

アトリウムからスロープを上がり、左に曲がったところ。アトリウム含め、たくさんのアクティビティが見え隠れするだろう居場所。

都市生活の断片的情景の創出だと思います。

都市生活のさまざまな断片的情景が創出される機会をあちこちに散りばめられていくことが、主要なテーマ

富山市民プラザ | 新建築データ (shinkenchiku.online)

彼が上の文献で語っているように、屋内のパフォーマンス空間=アトリウム、を中心に、住民の様々なアクティビティを許容する場所が、関係性を保ちつつ点在します。

機能について

まず、槇文彦氏がこの建築を設計するきっかけとなったのが、富山市制百周年記念事業でした。大手通りモール、という歩行者のための通りとそこに面するこの建築が、富山市の都心部活性化の基点となるよう計画されたのです。それまでのこの街では入れ替わりの激しい建物が多かったそうです。そこに、このような、目的を果たすためだけに訪れるのではなく人々の居場所となる建築が建ったことは、本当に頼もしかっただろうと想像します。

機能としては、アンサンブルホール、小演劇の公演やそのリハーサルスペース、マルチスタジオ、アートギャラリー、外国語専門学校、これらに賑わいを促すための雑貨屋や花屋といった民営企業が入っている。

上記の機能を満たし、かつ公的施設としてのコンセプトも満たしながら設計されました。
この建築が担う役割が、第三セクター方式(*1)のもと、文化・情報・レクリエーション機能が融合した公的施設でした。さらに、公民一体での計画、つまり参加型のデザイン、という方法がとられています。

ここからは、機能から発想した空間を作るコンセプトについてです。
重厚と言うより、カジュアルで軽やかな雰囲気の建築にしたかったとのこと。まさにその通りの空間になっていました。
さらに、

わずかな時間で手軽に絵画や音楽を鑑賞し、食事を楽しみ、体をリフレッシュし、カルチャースクールに参加するといった自発的、能動的活動を促す場面を多く用意すること

富山市民プラザ | 新建築データ (shinkenchiku.online)

このような空間が作られていったのだと考えます。

*1、国や地方公共団体(第一セクター)と民間企業(第二セクター)の共同出資によって設立される事業体。(引用:第三セクター(だいさんせくたー)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)

外観

上の写真が、アプローチ動線の写真です。引き込まれるように誘導されてしまう気がします。
槇さんは、同時期に「スパイラル」という建築を東京表参道に設計していますが、その建築と似ているところが見られます。

大手モール側に前庭を設け、フッテージを長くすることで町との関係を密なものとし

富山市民プラザ | 新建築データ (shinkenchiku.online)

外観は従来の重厚感を脱するため、箱ものではなく、それぞれの内部機能の特徴を表したものにした。
このような「都市」的建築の都会的な空気は町全体に浸透してきているそうだ。竣工から30年経った今も、変わらない姿でいるのはメンテナンスはもちろん、槇さんがバブルの奇をてらった建築を作る風潮に抗い、時代を先取りした、考えのもと作られたからでしょう。

内観

目的の場所に行くまでに、まわりの光景が自然に目に入ってくる。まるで街を巡り歩くような感覚が楽しい。

引用:https://www.nikkenren.com/publication/ACe/ce/ace1308/pdf/ACe1308_50-54.pdf

ほかにも、「都市」をコンセプトに作られた建築に行ったことはあるが、こんなに「都市」を感じたことはなかったです。
参加型デザインで、本当に都市と似たような作られ方をしていったことも関係しているのかもしれませんね。

図面より見る計画

出典:https://www.nikkenren.com/publication/ACe/ce/ace1308/pdf/ACe1308_50-54.pdf

配置計画

エントランスのエスカレーター上がってすぐの、アトリウム空間を中心に、それをラーニングセンター棟、ホール棟、ギャラリー棟が配置されています。
これらの施設が、回遊動線で結ばれて、人びとをどんどんと上の階へと誘ってしまいます。
さらにそれぞれの場で行われている行為が垣間見えるように構成されています。

ディテール

使うのは、足元から、花崗岩、タイル、アルミ、ガラスと、上に向かうにつれて軽やかな印象を与える素材とした。

最後に

このブログでは、「一日一建築」と称し、いろいろな建築家の方の建築を紹介しています。よかったらご一読ください。↓
Pioneer Of Attractive Archi – より深く名建築について知ることができるサイト。 (attractive-archi.tech)

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参考書籍等

槇さんは、日本、特に東京の都市の研究をしてきました。その研究成果の載った本です。
都市について学ぶときには必読書でしょう。

また、槇さんについて知るときにはヒルサイドテラスは欠かせません。
このような書籍は、図面なども載っているためおすすめです。建築学生としては必読です。

参照サイト等

富山市民プラザ | 新建築データ (shinkenchiku.online)
第三セクター(だいさんせくたー)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)
・https://www.siminplaza.co.jp/
・https://www.nikkenren.com/publication/ACe/ce/ace1308/pdf/ACe1308_50-54.pdf
・https://markw.exblog.jp/7301575/
・https://www.maki-and-associates.co.jp/details/index_j.html?pcd=52

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