【Expo70 住宅カプセル】大阪万博で黒川紀章が初めて示した「住宅ユニット」。これが彼のカプセル初期建築だ。

出典:KISHO KUROKAWA
大屋根のトラスに設置された「Expo70 住宅カプセル」

概要

さて、本日紹介する建築はExpo70 住宅カプセルです。これは、タカラ・ビューティリオンと同じく、大阪万博の際に作られたパビリオンとなっていて、なんと、あの時の「太陽の塔」の周りの大屋根トラスの一部から吊り下がっています。
この建築は、今の住宅を大きく変えました。早速見ていきましょう。

ここで少しだけ自己紹介をさせてください。「一日一建築」と称して毎日自分の好きな建築について発信しています著者のちぇりーです!
このサイトの特徴として、建築学生が建築計画という観点から評価するというところで、ボリュームは少し多めですが、その分、建築についてより深く学べると思うのでぜひ見てみて下さい!

見どころ

出典:https://capsule-architecture.com/1970expo.html

この上部についている赤くハイライトされているものが、住宅カプセルです。
これは、太陽の塔の周りに設置された丹下健三設計の大屋根のトラスから吊り下げられていて、目の前に見える階段を上がると入ることができます。

見どころとしては、彼の一番のコンセプトが表れている部分、住宅をさらに細分化して、部屋単位で作られたカプセルに注目です!

建築としての評価は?

建築家

今回の設計は、黒川紀章です。
彼は、メタボリズムを提唱し、それを建築で表したとして有名です。彼は同時に活動家でもあり、国内外で活躍していたため、国外の作品もあります。

私のブログでも紹介していますので是非見てみてください!

【黒川紀章】丹下健三から学んだメタボリスト。

概要 本日紹介するのは、黒川紀章氏です。彼は、建築家としてよく知られていましたが、一方政治活動家でもありました。そんな二足の草鞋の彼の思考は、社会的な意義の観点…

コンセプト

部屋ごとに分かれているカプセルで住宅を作ること、です。

これは、速い流れの社会に追随するような人の流れに、建築がついていけるように設計されました。これは、例えば子供が実家から出る際に、子供部屋も一緒に引っ越すことができるようになります。

そして、これが今後のプレファブ住宅のプロトタイプとなる、と彼は考えたのです。

機能について

その名の通り、住宅です。

外観

出典:https://capsule-architecture.com/1970expo.html

これが、その外観です。取り外し可能なカプセルで空間を構成していることで、住宅を機械のようにつくっていて、メカニカルでかっこいいですね!
このパビリオンは、「空中テーマ館」と呼ばれ、またこの年は宇宙へ行く飛行船などの展示が多く見受けられたため、そのメカニックな印象はぴったりだったと思います。

内観

出典:https://arqueologiadelfuturo.blogspot.com/2009/10/osaka70-ilas-exposiciones-universales.html

この模型写真が語るように、部屋ごとにカプセルは分かれています。
中央のリビングカプセルから三つのユニットにアクセスでき、これが一人一人のための部屋です。
その一方で、この建築が実現したら、完全に一人のためのスペースで生活が完結してしまいそうで、家族間の交流が、少なくなってしまいそうだと感じました。

出典:https://arqueologiadelfuturo.blogspot.com/2009/10/osaka70-ilas-exposiciones-universales.html

実際の内装はこのようになっていました。
ユニットバスやシステムキッチンといった、住宅の機能が規格化されているという点では現在とあまり変わらない様子は、このころから広まっていったのですね。

また、この時ユニットバスは、1964年に菊竹清訓が提唱したばかりで、この建築がきっかけでさらに広まったといっても過言ではありません。

図面より見る計画

出典:https://capsule-architecture.com/1970expo.html

図面からもわかる通り、トラスの中に浮いていて、さらに住宅が部屋単位に分けられそれがカプセルとなっていますね。

上の一人用のユニットに注目してみると、また3つのカプセルに分かれています。右にキノコの様な形をしたユニットバスのカプセル、真ん中に比較的大きな三角形のキッチンと居室のカプセル、左に長方形のベットのあるカプセル、があります。
このように、一人の部屋もさらに三つの異なる機能のカプセルに分かれています。
機能ごとに分かれたカプセルは、住宅を本当に最小単位に分解していて、必要な機能が追加したり減ったりすることに対応する、というメタボリズムの思想をまさに具現化した建築となっています。

また、この一人用ユニットの一にも工夫があります。
子ども用カプセルだけ離れていて、親の女性用カプセルと男性用カプセルとが、ベットカプセルで隣接している理由は、もしかしてベットカプセルが連結して二人の寝室になるからなのかな?と想像しました。

ディテール

出典:https://arqueologiadelfuturo.blogspot.com/2009/10/osaka70-ilas-exposiciones-universales.html

よく見るとわかるのですが、床下には小さな窓が開いています。
これが、人々に閉塞感を与えすぎないための、小さな工夫だったのでしょう。
ここで、窓が小さすぎて閉塞感を感じてしまう、と彼は気づき、のちの大きな窓がカプセルごとにつけられた「中銀カプセルタワービル」を設計したのではないかと感じました。

中銀カプセルタワービルについても紹介していますので是非見てみてください。

【中銀カプセルタワービル】黒川紀章のメタボリズムを表した作品。

概要 さて、本日紹介する建築は中銀カプセルタワービルです。設計は、黒川紀章で、彼の思想を一番示した作品として有名です。 ここで少しだけ自己紹介をさせてください。…

最後に

このブログでは、「一日一建築」と称し、毎日いろいろな建築家の方の建築を紹介しています。よかったらご一読ください。↓
Pioneer Of Attractive Archi – より深く名建築について知ることができるサイト。 (attractive-archi.tech)

昨日紹介した建築はコチラ!

【Expo70タカラ・ビューティリオン】

概要 さて、本日紹介する建築はExpo70タカラ・ビューティリオンです。この設計は、黒川紀章の設計で、大阪万博の際に作られたパビリオンです。 ここで少しだけ自己紹介を…

参考書籍

以上の書籍を参考にしました。
この書籍では、カプセル建築の写真や図面を主に掲載していて、図で理解できたのが良かったと思います。カプセル建築やメタボリズムを学ぶ初心者も中級者にもぴったりだと思います。
黒川紀章氏は亡くなってしまいましたが、息子さんやこのカプセルの使用経験がある方の対談も載っています。中銀カプセルタワーは解体されてしまいましたが、その記憶は確かにこの本に収められています。ぜひ手に取ってみて下さい!

参照サイト等

・https://arqueologiadelfuturo.blogspot.com/2009/10/osaka70-ilas-exposiciones-universales.html
・https://capsule-architecture.com/1970expo.html
KISHO KUROKAWA

【Expo70 住宅カプセル】大阪万博で黒川紀章が初めて示した「住宅ユニット」。これが彼のカプセル初期建築だ。” に対して2件のコメントがあります。

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