石の美術館

概要
既存の石蔵を残しながらも、様々な石を使った手法でギャラリーとして美しく生まれ変わらせた。
予算がない中で、石職人との協働によってこの建築は生まれ変わった。
隈研吾氏の転機の建築として広重美術館を挙げる人が多い中、これも転機の一つであるとの考えの人もいる。
この建築では、現代のコンクリートとガラスという透明性と不透明性という対極を共存させることでその「対比」を見せるのではなく、その逆である「融合」や「グラデーション」を突き詰めたのです。
どんなグラデーションが存在しているのか?それが、様々な種類の石壁です。不透明な、1/3のみ石が抜かれた壁と、石のルーバーという透明な壁です。
行ってみるには?
所在地
アクセス(一般開放している?)
車では、那須高原SAから約20分です。
一般開放しており、カフェ、ショップは入場無料だそうです。
下記に示してあります。
営業時間等
開館時間 10:00-17:00(最終入館は16:30)
那須芦野・石の美術館 STONE PLAZA【公式】 (stone-plaza.com)
休館日 月曜日(祝休日の場合は翌平日)※冬季休館(12月末~2月末)
(冬季休館の日付はHP Homeお知らせにてご案内します。)
※その他臨時開館・休館することがあります。
料 金 大人 800円(700円) 小中学生 300円(200円)※( )内団体(15名以上)料金
※カフェ・ショップは入場無料
見どころ

なんといっても見どころは、この様々な石の使い方。最後までやり切るところが隈研吾さんらしい。
他にも、この建築の特徴は、既存の二棟のつなげ方がバラバラだということ、そして予算の関係から塀が低くなってしまいましたが、それを逆手に取り借景としてしまったことがあります。下で詳しく説明しています。
また、隈研吾氏の特徴の木材を使っていて、それが現在の使い方や広重美術館での使い方とは違い、荒々しく、ずっしりとしています。
もっと詳しく(独自の観点からの評価)
建築家
隈研吾氏です。
この建築は彼の大きな転機となっている。なぜなら「石」という材料を最大限に活用する、いや、「石」という材料しか使わない。そのような強い意志が表れています。このようにして、一つの材料でも建築を建てることができる。そのような自信につながったのかもしれません。
彼が「石」という素材にこだわった建築に、角川武蔵野ミュージアムや、廣澤美術館があります。
コンセプト
「石」という材料のみ使うということ。
隈研吾氏は、この建築を通して自分が達成したことについてこう評価している。
芦野石という素材に、徹底的にこだわって、この石の多様性を引き出すことによって、素材(芦野石)と場所(芦野)とがひとつに接続されました。
『場所原論』 著:隈研吾
機能と、その提案
低コストで大正期に建てられた米蔵を小さなミュージアムへとリノベーションすること。
依頼主の方が石屋を営んでおり、可能な限りその石のみを材料とし、そして白井さんの抱える職人さんの二人のみで建てたいとのことだった。
それは、縦割りの分業体制によって出来上がる現代の建築に対してのアンチテーゼでもあった。
このように別業界をまたぐ必要をなくすため、石を抜いただけの開口が出来上がった。
敷地分析
敷地の芦野の芦野石を使った建築だ。
デザイン
構造的に問題がない範囲で石を抜き取れるのは1/3、という制約の中でスタディを重ね、現在の姿のように様々な開口部を創り出した。
それでは、光だけでなく、風も通り抜けてしまう、いわば「外」の空間となってしまうのではないか?
そうではないのです。
白井さんの工場にある白い大理石を薄くスライスすることで、ガラスという別種の材料を使うことなくこの問題を乗り越えたのです。
平面計画

既存の二棟の接続を、新たな大きな一棟を建てるという方法を使わずに成し遂げました。
敷地内の配置としては、写真の右の建物がエントランスホールとなっていて、その奥に、プラザ、そしてギャラリー1と続く。そのように進んでいき、左奥に見える建物が一番大きなギャラリー2となっています。
石という一見透明性のない建築で、このように視線をつなぐことで、より透明感を醸し出しています。
動線計画

二棟の既存建築をつなぐ方法として、通る道を斜めにすることで視線をつなぐ方法があるとわかった。
構造計画
組積造である。
構造設計の中田 捷夫さんによると、1/3の石を抜き取っても大丈夫とのことだ。
また、ルーバーの使われているところでは、H鋼のサポートが必要になりましたが、柱もそこに取り付けられるルーバーのどちらも石で作られた。
環境計画
石を使っているにもかかわらず透明性がある。
また、材料が同じことによって内と外とがシームレスに繋がれる。
参考書籍
隈研吾氏の建築を学ぶ上で、私が一番におすすめしている書籍です。
図解でわかりやすく、かつ明快な分類でまとまっていることがこの本の特徴です。初心者の私でも読むのが楽しく、かつ建築学生として有用な知識が詰まっていました。
隈研吾建築の変遷を全体的に捉えること、一つ一つの建築の特徴を理解すること、というどちらものアプローチで学ぶことができます。
ぜひ手に取ってみて下さい!
言わずと知れた名著です。建築に携わるものとして、読むことは必須だと思います!
参照サイト等
・ 『隈研吾建築図鑑』 画・文:宮沢洋
・『場所原論』 著:隈研吾
・那須芦野・石の美術館 STONE PLAZA【公式】「隈研吾と石」KENGO KUMA × STONE (stone-plaza.com)
・那須芦野・石の美術館 STONE PLAZA【公式】 (stone-plaza.com)
・“隈研吾設計”那須芦野・石の美術館 STONE PLAZA (iskaa.net)
・Stone Museum – 石の美術館 | Architecture | Kengo Kuma and Associates (kkaa.co.jp)
・さまざまな表情を見せる石の魅力に触れる 「石の美術館 STONE PLAZA」 |ナンスカ (nansuka.jp)